公益財団法人日本繊維検査協会

テキスタイルトレンドと品質対応

2014-15秋冬テキスタイルトレンドと品質管理のアドバイス(プルミエールヴィジョンなどの素材展をベースに)

9. 後記-傾向とまとめ

1)今シーズン(14-15aw)の素材コンセプトは先シーズン(13-14aw)の「装飾性」&「機能性(テクニック)」というキーワードの発展型にあり、矛盾する2つのファクターをひとつにした「二律背反:antinomy」がコンセプトになっています。 それをPVでは、「現実」と「非現実」「人工」と「自然」と表現 MU(ミラノウニカ)では「Aristocratic Trait:貴族的タッチ」と「Barbarian Charm:未開の魅力」というキーワードで表しています。

テキスタイルへの具体的な落とし込みとして、グランプリ(大賞)を獲得した日本のメーカー「小松精練(株)」が創作した、鮮やかなカラーの低反発ウレタン素材という「ハイテク素材」の両面をナイロンタフタのタータンチェックとヘリンボーンという「伝統的」先染め柄をデジタルプリントで表現した素材をボンディング(サンドイッチ)した素材はまさに「二律背反素材」といえます。又この賞以外の受賞作品もイノセタ(伊)はシルクのダブルフェイス。ルイジ・コロンボ(伊)は柔らかな毛足の裏にネオプレンのボンディング素材も「二律背反素材」です、この事は素材は日々進化し続けモードに限りない永遠の進化を与えるものであると確信します。

2)この傾向はこれから素材表現として形をかえて進化していくと思います。 しかし、ここで問題は「二律背反素材」は複数の素材のキャラクター(性格、特色)をひとつに表現することになるため、収縮性、染色性、縫製面、など品質管理面では大変やっかいな問題をはらんでいます。

 以上、「テキスタイルの傾向予測情報」は、2014-15AWプルミエール・ヴィジョン展及びウニカ展の取材に基づき、予測情報としてまとめたものです。

解説:MKプランニング代表 テキスタイルプランナー 小山正夫

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*品質管理面からのアドバイス

1.カラー傾向について
ダークカラー、高明度カラー、インパクトの強いカラーとあげられています。 基本的なことですが、堅牢度を確認しておくと良いでしょう。

2.素材の質感等に関して
重さを感じさせない厚み、3D構造、空気で膨らんだジャガード等、凹凸感を持つ素材が注目されています。せっかくの質感が損なわれないよう企画段階において「表示」まで念頭において物作りを進めることが重要です。合わせて物性面(引っ掛かり等)も事前試験で確認しておくと良いかもしれません。

3.素材傾向の予測に対する対応
1)ボンディング
ドライクリーニング溶剤で溶解し、剥離することがあります。剥離試験もありますが、実用洗濯、実用クリーニング等実際の取扱いに近い試験を実施し、外観変化を確認することがベターです。

2)ポリウレタン
他の繊維と比べ、染色性が低いので、染まらず白く残ったり、濃色は色泣きすることがあります。紫外線や薬品に弱く、塩素漂白剤で黄色く変色したり、劣化が早まったりします。白物とはいえ、洗濯時には塩素漂白剤の使用を避けるなど取扱いに十分注意する必要があります。また、熱にも弱く、高温や中温でアイロンをかけるとアタリが出たり、生地を引っ張ってアイロン掛けすると伸縮性が低下することがあります。アイロン掛けは低温で当て布が良いでしょう。

3)素材の組合せ
違う素材を組合せた時、違いが特に現れやすいのが、洗濯やアイロン、乾燥を行う時です。様々な素材を組み合わせた時の取扱いは弱い素材に合わせます。
(例えばアイロンの温度・・・最も熱に弱い素に合わせる<綿×ポリエステルならポリエステル等>)
アイロンによる素材ごとの収縮差の問題については、使用する素材ごとに実際にアイロンをかけて寸法変化率を確認します。また、アイロンをかけた時に動きに大きな差がある素材を組合せる場合は、縫製する前に素材ごとに熱や蒸気を当てて、生地の動きを安定させたり、デザイン修正して変形しない程度の使用量にしたり、使用することを止めて、他の素材に変更するなどの対応も必要です。
水洗いやドライクリーニングなど洗濯で生地が縮んだり、伸びたりしないかの確認は各々の生地単体で寸法変化率を確認するだけでなく、実際に縫い合わせ、実状に合った方法で変形しないか等確認すると良いでしょう。
異素材を組合せることで、表示が複雑になってきます。品質表示に関しては、家庭用品品質表示法に基づき、適切な表示をするよう特に注意が必要です。

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