公益財団法人日本繊維検査協会

ファッショントレンドと品質対応

最新のストリート・ファッション動向('15年9月〜'16年3月)と品質管理上の留意点


1.'15/'16年秋冬ストリート・ファッション全体傾向

  • 今シーズンは、スポーツ、ミリタリー、エフォートレス、ビッグボトムの4つのトレンドが台頭している。全体的にカジュアルでスポーティーな雰囲気が継続しているのは昨年の秋冬シーズンと同様だが、シルエットが大きめでゆったりしたスタイリングが新しく登場しており注目される。
  • スポーツスタイルは、昨シーズンからの継続トレンドであり、スタジアムブルゾン、Gジャン、パーカなどのアウター類に、スキニーやスエットパンツ等を合わせ、足元はスニーカー、小物としてキャップやニット帽、リュックを組み合わせたスタイルの支持が高い。
  • 新しい点は、これまでタイトフィットなシルエットが好まれていたのに対し、とくにアウターのシルエットが大きめになっている点であり、ボリュームのあるトップスにスリムなボトムの組み合せが目立った。  ミリタリーでは、MA-1のナイロンブルゾン、モッズコート、カーゴパンツなどのアイテムが好まれている。また、ミリタリー調のスタイルの支持の影響から、カーキ色、オリーブ色などのアースカラーが、ニットやワンピース、スカートやガウチョパンツなどの幅広いアイテムで取入れられている。
  • 2015年の秋冬シーズン以降、「エフォートレス」(effortless)というキーワードが注目されている。努力(effort)がいらない(less)という意味から、「努力を要しない、軽々とやってのける」スタイルをさす。ケーブルニットのざっくりとした大きめのニットや、シャツのフロントボタンを1つ2つ外した着こなし、1サイズ大きめのデニムをはくなど、全体的にゆったりしていて、あか抜けた雰囲気を出すのがポイントとなっている。  ラフな感じのトレンドは、素材にも現れており、表面がふわふわとした紡毛のコート、ざっくりと編んだケーブルニットなど、凹凸を感じさせる素材感が求められている。こうした素材そのものの風合いに特徴をもたせた傾向は、今後ますます広まっていくことが期待される。
  • ビッグボトムのトレンドが広まるなか、ボーイフレンドデニムやワイドパンツ、ガウチョパンツなど、ゆったりしたボトムスが支持を集めている。ガウチョパンツでは、ポリエステルやレーヨンなど、とろみのある素材感のものが好まれ、ライダースジャケットやMA-1ブルゾンなど、メンズライクなアウターに、柔らかな素材感のボトムを合わせるスタイリングが広まっている。特にデニムは、スキニー中心から、ワイドタイプへ移行しており、90年代に流行したハイウエストで腰回りに余裕のある「マムジーンズ」(ママのジーンズの意味)が広まっている。さらに、腿や膝にスリットを入れたダメージデニムの人気に続き、裾部分を切りっぱなしにしたり、ほどいてフリンジにしたタイプのものが支持を集めている。パンツ人気に押され、スカートの割合は3割弱くらいであったが、チュールスカートや花柄プリントのフレアスカートなどが好んで着用されていた。
  • アウターでは、ウールのハーフコート、レザーや合皮のライダース、レーヨンサテンに刺繍を施したスカジャンなどが目立った。新しい傾向なのが、ボンディングとリバーシブル(一枚仕立て)であり、デニムとボア、フェイクムートンとボアを貼り合わせたアウターなどが、ハリとボリュームがあって、立体的な着用感がでるという理由から支持を集めている。また、ウールのマニッシュなチェスターコートは、男女問わず親しまれており、かっちりと構築的な雰囲気のアウターが目立った。加えて、ロングシャツ、ロングカーディガンなど、ロング丈のアウターが目立って増えており、重心が下にくるようなシルエットは、これまでになかった着こなしであり、重量感や、ロング丈への支持はいっそう広まりそうである。

2.'15/'16年秋冬ストリート・ファッョンの特徴的なスナップ

  • (1)本来のMA-1のフライトジャケットより丈長のデザインが特徴的なナイロンアウター(左)。右のコートは通称プードルコート。アクリルのボアがふわふわとしているところからこの名前がついた。
    2016年1月19日 原宿 7℃
  • (2)
    メンズでも、MA-1のアウターをメインに、トレーナー、黒のスキニーを合わせたスポーティーなスタイルが好まれている。
    2016年1月19日 原宿 7℃
  • (3)
    レーヨンサテンの生地に胸や袖、後ろ身頃などに刺繍を施したスカジャンの人気も増している。インナーにはシャギーのニット、ボトムはワイドパンツの旬のアイテムのコーディネート。
    2015年12月21日 原宿 21℃
  • (4)
    衿にボアをつけたランチコート風のアウターの人気が広まっている。本来のランチコートはムートンを使うが、コットンやフェイクムートンを使い、布をボンディングしているものが目立つ。
    2016年1月19日 原宿 7℃
  • (5)
    ケーブル編みのコンビネゾンの上に羽織ったのは、インナーのボアとフェイクムートンをボンディングしたアウター。上半身のボリュームが大きくなっているのが今期らしいスタイリング。
    2016年2月7日 原宿 9℃
  • (6)
    上質なリバーシブル(一枚仕立て)のハーフウールコート。ボトムはダメージデニムを合わせて、カジュアルダウンした着こなしになっている。
    2016年2月21日 銀座 8℃
  • (7)
    二人でお揃いのプードルコートを着用。左のボトムが今シーズン話題となっているマムジーンズ。ケミカルウォッシュ加工を施し、ダサかわいい雰囲気を出すのがポイント。
    2016年2月21日渋谷 8℃
  • (8)
    凹凸のはっきりしたヘリンボーンの織が特徴のノーカラーのコート。シルエットはすこしゆったり目で、エフォートレスな雰囲気。
    2016年2月7日 代官山 9℃
  • (9)
    3人お揃いでデニムのGジャンを着用。ドロップショルダーなど、若干ゆったり目でショート丈のデザインが好まれている。
    2015年10月31日 原宿 14℃
  • (10)
    ケミカルウォッシュ加工を施した身頃にフェイクレザーの袖をつけたスタジアムブルゾン。インナーにはパーカとショートパンツを合わせてコンパクトにし、ビッグなアウターとのバランス良い着こなしになっている。
    2015年10月13日 渋谷 21℃
  • (11)
    ケーブルニットの上にチェック柄シャツを羽織るなど、長い丈のアウターが好まれている。これにワイドなシルエットのマムジーンズを合わせて、70年代風のコーディネート。
    2015年12月9日 原宿 17℃
  • (12)
    ボトムは、デニムのガウチョパンツ(左)や、マムジーンズなど、ゆったりのシルエットが多く、ワイドシルエットがスキニーを超えて広まっている。
    2015年12月9日 原宿 17℃
  • (13)
    ノーカラーのジップ使いがスポーティーなアウターに、ガウチョパンツのセットアップの組み合わせ(左)。ジャージ素材を使ったチェスターコートなど、ジャージづかいのアウターが増えている(右)
    2016年2月7日 代官山 9℃
  • (14)
    チュールスカートは、インナーのスカートと外側のスカートの丈をあえてずらして、中が透けて見える効果を狙ったデザインのものが好まれている。
    2015年10月31日 原宿 14℃

*写真及び解説:共立女子短期大学 生活科学科 カラー&デザイン研究室

品質管理上の留意点

2015年~16年秋冬のストリート・ファッション動向に見る品質管理面からの留意(アドバイス)事項



今回は「スカジャン」と「フェイクムートン」について、その特徴と注意点を挙げます。

★スカジャン
横須賀の米軍兵が着用し、一般には1970~80年代に流行したジャンパーの事。
光沢のある薄手のレーヨン製で、背中や胸に派手な刺繍が施されているのが特徴です。
他に、ラグラン袖、袖と身頃が配色である事などが挙げられます。

① 光沢のある素材は、サテンを使用している場合が多くあります。
サテンは浮き糸が多く表面に出ているため、糸が引っかかりやすいので注意が必要です。
また、刺繍も同様に浮き糸が多いので、引っ掛けによる糸の引き抜けに注意します。

② レーヨンは一般的に、水や湿気に弱く、収縮したりシワになったりします。また、水滴があたると
輪ジミになりやすいという特性もあります。このような事から、水洗いの可否や、着用時の注意
を品質表示などで確認する事が必要です。

*レーヨンはしなやかで手触りが良く、サテンは光沢があり高級感があります。そのような素材をジャンパーというカジュアルなデザインと組み合せる事で、様々なコーディネートでも楽しめるファッション性の高いアイテムとなっており、人気が再燃しています。そのため、古着からラグジュアリーブランドまで、幅広い層に向けて製品化されています。古着の場合には、あえて安価なレーヨンで作成されているようなものもあり、取り扱いには注意が必要です。値段が高くても、レーヨンの特性が大きく変わる事はありませんので、高価イコール丈夫という訳ではありません。

*バックパックやショルダーバッグを持つ場合は、肩、背、腕回りなどに、重さや動作によるヨレでシワが生じやすくなります。また、レーヨンは毛羽立ち、白化なども起こりやすいので、擦れや着用時の物理的作用による摩擦などに注意します。着用中は体温や外気の湿気などの影響もあり、ダメージが進行しやすくなります。着用後は、なるべく湿気をとるようにし、シワは当て布なども使用しながら、低い温度で軽くアイロンをかけるなどして、シワが取れにくくなるのを避けると良いでしょう。雨などに濡れた場合には、刺繍からの色泣きや水滴によるウォータースポットなどが起こる可能性がありますので、無理にしみ抜きなどをしようとせず、クリーニング屋さんなどに相談するのも良いでしょう。


★ムートン
メリノ種、メリノ雑種の子羊をなめし、刈り毛し、染色したもの。
皮面をスエード加工やナパ加工にし、ダブルフェースにもする。

① フェイクムートンはボンディング加工などをしている事が多いです。
ボンディング加工: 2種類またはそれ以上の異なる織編物を貼り合わせる加工で、表裏共に通常の織編物に見えます。

② 貼り合わせる接着剤にはポリウレタン樹脂、天然ゴムなどが使用されます。ポリウレタン樹脂は
2~3年で劣化すると言われています。

「劣化の主な要因」
加水分解劣化: 空気中の水分下での影響でひび割れ、樹脂膜の剥離、接着剤の液体化によるシミ出しなどが経時劣化で起こる。湿度、温度が高いほど反応速度が速くなる。

熱劣化: 高温にさらされた場合に起こる。

皮脂による劣化: 汗などによる皮脂汚れが劣化を促進させる。

機械的応力などによる劣化: 着用やクリーニング処理のもみ作用による劣化。

その他、表側のフェイクスエードや裏側のボアは、着用時やクリーニング時の摩擦などの物理的
作用により、毛羽の消失や毛羽ヨレ、擦り切れなどが起こりやすいです。

*様々な加工技術により、天然皮革を使用しなくても保温性が高いものが多くなっています。  色落ちや重量など天然皮革でデメリットになりやすい性質を排除し、着用しやすくなっています。  また、見た目を天然皮革に似せなくても、風合い、色合いなどファッション性に富み、冬のアイテム として気軽に楽しめるようになりました。それでも、コートですと高価になりますので、長持ちする よう心掛けたいものです。コートは真冬にのみ着用するので、保管時間が長くなります。保管前は クリーニングで汚れを落とし、風通しの良い冷暗所で保管するようにします。 経時劣化や着用摩擦など防げないものもありますが、連続着用を避けるなど、着用の仕方や、 手入れ、保管などに注意する事で長持ちさせる事ができます。

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