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再度・指差し呼称のお奨め
指差呼称とは読んで字のごとく、操作・確認対象を「指で差し」、名前を「呼称して」確認する一連の動作をいいます。この動作によって次のような生理的・心理的効果があるといわれています。
大きな声を出し、指をさすことで、大脳が活性化する。これは、大脳の運動領域・筋知覚領域・言語領域・視知覚領域が一斉に活動するためです。
声を出すことで口のまわりやほほの咬筋が働く。この咬筋運動は意識の緊張を高めたり力を発揮するのに役立つ。
指差しにより、意識が自分の外に向けられる。
指差しで自分と外界が結びつき、正確に対象を認知する。
筋肉運動を伴う行動は意識に残る。
この指差呼称というエラー防止に役立つと考えられる方法は、もともと運転士が経験的に始めたものと言われています。これが本当にエラーを防止しているかどうかはよく分かっていませんでした。そこで、鉄道労働科学研究所は指差呼称の効果を検証するために、ボタンを押す、という操作を次の4条件の下で行いました。
A何もしないで、ボタンを押す。
B指差しをする。
C呼称をする。
D指差呼称をする。
この結果、A 何もしなかった条件に比べて Bの指差呼称を行った場合、押し間違いの発生率が3分の1以下になることがわかりました。また、指差呼称をした場合としない場合で時間的な遅れもほとんどないことも確認されています。指差呼称が誤操作の防止に有効であることは実験的にも証明されています。
しかし、ただ声を出し指差すだけでもう大丈夫、というものではありません。自分が確認する対象を視覚でとらえ、聴覚を通して声で確認し、動作によってはっきりと意識づけを行ったり、自分が何をしようとしているのか、自分の行為によってシステムにどのような変化が起きるのかを理解した上で、はじめて指差呼称という行為も生きてくるといえます。
また、一方ではいつも指差呼称が有効だろうかという疑問も投げかけられています。別の実験では時間的余裕がないとき、まじめに指差呼称を行うことが、かえって考える時間を少なくしているのではないかということが懸念されました。
緊急事態は別ですが、「通常の忙しい時に指差呼称をやるとさらに忙しくなるし、声を出すとうるさい」という反論があります。「そんなことはやっていられない」というものです。
はたしてそうでしょうか?
忙しいとやるべきことがたくさんあります。次々に仕事をこなさなければなりません。目の前の仕事をしながら頭は次のことを考えてしまいます。実はこの状態が極めて危険なのです。今、目の前の仕事への注意が非常に手薄になっている状態に気づかなければなりません。つまり、今にもエラーが発生する、まさにその状態にあるのです。
そこで、次の仕事に行ってしまった注意や意識を取り戻す方法の一つが呼称なのです。人間は認知特性上、指で差しながら声を出している時、他のことを考えるのは非常に難しいのです。できないことはありませんが困難です。ということは、その瞬間は注意や意識が目の前の仕事に集中しているということなのです。
「忙しい時こそ指差呼称」、、、。これが正しい理解なのです。
さらに、いつでも指差呼称をする必要はありません。重要なところに限定すべきです。いつでもやっているとマンネリ化します。シーツ交換のときに「シーツの折り目、45度、よし!」なんてやる必要はありません。薬剤のミキシングや配薬、配膳の時などは、もし間違ってしまうと大変な結果をもたらす可能性があります。まさに、このような時にこそ指差呼称を確実にやるべきなのです。
紹介者 Y.O