ファッショントレンドと品質対応
最新のストリート・ファッション動向と品質管理上の留意点(’13年4月〜8月)
2013年春夏(4月~8月)ストリート・ファッション全体傾向
- 昨年、2012年の春夏は、ナチュラル&フェミニン調のスタイルが支持を集めていたが 、今年の春は、これまでのイメージが大きく変わり、ヤング層を中心として、スポーティーな90年代調のスタイルが若者を中心に大流行している。アイテムでは、ブルゾン、トレーナー、スエット素材のアイテム、キャップにスニーカーなどであり、これら90年代に流行したストリート系のスタイルがリバイバルしている。
- スポーティーなスタイルのアクセントとして使われているのがネオンカラーであり、Tシャツやタイトスカート、あるいはキャップやスニーカー、バッグなどの小物に、蛍光の黄色や黄緑、ピンクなどの強い色彩を使ったケースが増えている。
- モノトーンを基調としたコーディネートも、90年代に支持を集めたスタイルであるが、今年の春夏では、身頃はスエット素材、袖部分にナイロンのプリントを使ったトップスや、メッシュ素材、転写プリントを施したものなど、素材や加工にひねりを加えたアイテムが目立つ。また真夏でありながら、合皮のパンツを履くといった具合に、素材の季節感をあえて反転させたケースなどもみられた。
- ボトムでは、タイトミニスカートが好まれており、スポーティーなビビッドカラーのスエットスカート、ストレッチの効いたボディコンシャスな白黒ストライプのスカートなどがみられた。丈が非常に短いため、ストレッチが強く、身体にぴったりフィットしたものが求められているようである。
- アウターでは、スポーツやカジュアルなスタイルの影響から、スタジアムブルゾンやスエットパーカなどラフなものが支持されている。なかでもGジャンの人気が浮上し、ケミカルウォッシュの大きめのシルエットのものが20代前後の若者に好まれている。
- シースルーの素材を、フェミニン調でなく、カジュアルに使ったものが目立っている。特にスカートで、カラフルな裏地の上からオーガンジーのスカートをかぶせたダブルスキンのものが好まれている。このテクニックはスカート以外のジャケットやシャツ等にも広まりそうである。
- プリントや染めのアイテムが充実しているのも今シーズンの特徴である。転写プリントのチュニックやワンピース、グラデーション使いのシャツやTシャツ、ニットなど、色柄のユニークなアイテムが好まれている。
- (1)
今年の春夏のメインのスタイルであるスポーツスタイル。90年代を彷彿とさせるロゴTシャツにタイトミニやショートパンツ、足元はハイカットのスニーカーのコーディネート。ネオンカラーのアイテムの人気も高い。
2013年6月29日/渋谷/28c - (2)
モノトーンをベースにした、こちらも90年代のリバイバル調のスタイル。Tシャツの袖がプリント生地になっているもの(左)や、メッシュのTシャツにフェイクレザーのショートパンツ(右)など、ユニークな素材が好まれている。
2013年8月22日/原宿/32℃ - (3)
全身モノトーンのコーディネートも今年の春夏に好まれているスタイル。ボトムには、ストレッチの効いたタイトスカートをコーディネートさせており、ボディ・コンシャスなシルエットが注目されている。
2013年5月28日/渋谷/25℃ - (4)
アウターでは、Gジャンの人気が復活している。なかでも、ケミカルウォッシュのややだぶっとしたシルエットのものが好まれており、ミニ丈のフレアスカートと合わせて、新しいバランス感覚を楽しんでいる。
2013年4月24日/原宿/18℃ - (5)
二人がはいているお揃いのスカートは、花柄のプリントの裏地の上に、シースルーのスカートを合わせたダブルスキン状のユニークなタイプ。GじゃんやプリントTシャツでスポーティーな感覚にまとめている。
2013年4月27日/渋谷/21℃ - (6)
転写プリントのTシャツワンピースの下に、メッシュのカットソーを合わせ、上にはGジャンを羽織ったコーディネート。鮮やかで個性的プリントのアイテムが非常に目立っているのが今シーズンの特徴。
2013年5月27日/原宿/26℃ - (7)
Tシャツやシャツなどのトップスを中心に、ワンピースなどで支持を集めているのがグラデーションになったアイテム。写真はシャツの色に合わせてオーガンジーのバンダナを頭に巻き、ボトムはケミカルウォッシュのデニムスカートをコーディネートさせている。
2013年6月29日/渋谷/28℃ - (8)
90年代に流行したヘソだしルックのリバイバル。ミドリフ丈のTシャツにデニムのショートパンツ(左)、ノースリーブのワンピースにミドリフ丈のタンクトップ(右)など、ウエストラインを強調したスタイルが支持されている。
2013年7月20日/原宿/28℃ - (9)
上半身はティアードフリル、ウエストから下はアコーディオンプリーツのパンツになっているコンビネゾン。レース編みのボレロと合わせて柔らかなシルエットのコーディネートになっている。
2013年6月29日/渋谷/28℃ - (10)
全身を白で揃えた爽やかなコーディネート。レースニットのノースリーブトップスに、オーガンジーのワンピースを合わせて、透ける感じが涼しげな雰囲気の組み合わせになっている。
2013年8月22日/代官山/32℃
写真及び解説:共立女子短期大学 生活科学科 カラー&デザイン研究室
品質管理上の留意点
'13年春夏(4月~8月)のストリート・ファッションの動向と品質管理面からの留意
(アドバイス)事項
1)アクセントとして使われているネオンカラーは、染色堅ろう度が悪いものが多い。
生地試験で堅ろう度を確認することをお勧めする。(特に耐光堅ろう度が悪いので、要注意)
2)スウェット素材(編物)と織物素材等異素材を組み合わせている製品は、各々生地の寸法変化率が異なることから、洗濯後収縮差や外観が変化する恐れがあるので、より細かな気配りが必要である。
3)最近の傾向として、夏に合皮を着用するなど、素材の季節感をあえて反転させるケースが見られる。夏は特に汗堅ろう度を確認しておく必要がある。
また、合皮は素材の特性上、劣化するので、「この製品は合成皮革を使用しています。直接アイロンを当てないで下さい。合成皮革は時間の経過と共に劣化が起こる可能性があります」等の付記用語をいれることをお勧めする。
また、品質表示は雑貨工業品品質表示規定に従うこと。
4)身体にフィットするデザインに使用する生地やオーガンジー素材等は滑脱試験を実施すること。また、縫い目に滑脱テープを使用したり、巻き伏せ縫いをするなど縫製で工夫する方法もある。
5)シースルーの素材を使用するにあたり、特に注意しなくてはならないことは品質表示である。例えば、スカート等で裏生地にカラフルな生地や模様生地を使用し、この上にオーガンジーを使用した場合の表示は
表側 ○○○ %
裏側 ○○○ %
と表示する。
これは家庭用品品質表示法で、薄い生地の裏へもう1枚の生地をつけ、裏の生地の色や模様等が表面から透けて見えるように作ってある製品については、その両方の生地が表生地と解されるからである。
製品を企画した後、製造に入る前には事前に堅ろう度、寸法変化率、物性等の試験を行い、事前に確認することが、よりよい製品をお客様に提供する近道である。