ファッショントレンドと品質対応
最新のストリート・ファッション動向('13年9月〜'14年2月)と品質管理上の留意点
1.'13年9月〜'14年2月ストリート・ファッション全体傾向
- この秋冬期は、90年代のストリートスタイルのリバイバルとともに、スポーツスタイルを中心として、トラッド、ミリタリー、モード調といった80年代に登場したスタイルがベースとなった。とりわけ、80年代調のスポーツスタイルの支持は厚く、ニット帽やキャップをかぶり、トレーナーやパーカにスタジアムブルゾンやMA-1を重ね、ボトムはスエットパンツやデニムを合わせ、足下はスニーカーというコーディネートが10代、20代の若者男女の間で多数登場している。
- スポーツスタイルの次に目立ったトレンドは、マニッシュ調のスタイルである。チェスターコートやダッフルコートなど、かちっとしたシルエットのウールのアウターに、細みのパンツを合わせ、レースアップシューズ等のフラットな靴を合わせるなど、紳士的なフォーマルさを取り入れたコーディネートも、20代前後の女性に好んで取り入れられている。
- インナーでは、晩夏から初秋にかけて、ストレッチレースのカットソーやブークレーのニット、キルティング仕立てのフレアスカートなど、凹凸感があるものや、モコモコとした素材を使ったアイテムが支持を集めていた。
- アウターでの大きな変化は、ダウンジャケットの大幅な減少である。降雪後の数日間などでダウンの着用率は上がったものの、ここ数年の低価格ダウンの流布の影響からか、ファッションアイテムとしてのダウンという存在ではなくなったことがうかがえる。ダウンに代わり、ダッフルやトレンチなどのウール系コートが主流となり、加えて、MA-1などのナイロンアウターが台頭している。
- ボリューム感のあるコートやジャケットの増加が目立っている。綿×ポリエステル混紡のボア素材のコクーンコート、プードルのような毛足の長い素材を使ったハーフコートなど、暖かみがあり、ふんわりとした風合いのアウタが新しく登場している。
- スタジアムブルゾンなどにみられる身頃にウール、袖にレザーや合皮といったコンビの素材使いの発展系として、身頃の上部分にウール、下部分にレザーやファー、ボアなどを使った切り替えのデザインが目立っている。この切り替えデザイン傾向のバリエーションとして、次の春夏シーズンでも、レースとスエット、デニムとニットなど異素材を組み合わせたアイテムが支持を集めそうである。
- ボトムでは、スポーツスタイルの流れからのスエット素材のスカートやパンツ、ホワイトデニムとノンウォッシュデニム、マニッシュ感覚のウールのくるぶし丈パンツの支持が高い。スカートでは、ペンシルスカートなど、ストレッチ素材を用いたボディコンシャスなもの、千鳥格子のニットとタイトスカートのセットアップなどを中心としたニットスカートが好まれている。ボリュームのあるコートに合わせやすい細みのシルエットが、パンツ、スカートともに好まれている。
2..'13年9月〜'14年2月ストリート・ファッョンの特徴的なスナップ
- (1)
トップスやワンピースなどで、伸縮性のあるストレッチレースを使ったアイテムが目立った。ショートパンツやタイトミニスカートなどと合わせて、カジュアルでスポーティーなスタイルにレースが積極的に取り入れられている。
2013年9月18日原宿 29℃ - (2)
細かなキルティングを施し、張り感を持たせた素材を使ったフレアスカートなど、キルティング加工のアイテムが支持を集めている。セットアップやアウターなどでも多用されており、凹凸感のある素材が好まれている。
2013年10月19日渋谷 19℃ - (3)
マニッシュでクールな印象のコーディネートが目立った今シーズン。左はカモフラージュ柄ジャケット、右はメンズライクなウールのコートにレギンスのコーディネート。トレンドカラーとしてグリーンが浮上している点も注目される。
2013年11月26日原宿 19℃ - (4)
80年代のスポーツスタイルのリバイバルとともに、スエット素材のアイテムが増加している。パーカやトレーナーなどのトップスに加え、今シーズンはスエットパンツ、スエット素材のワンピースやスカートなどにも展開されている。
2014年1月26日渋谷 15℃ - (5)
80年代に大流行したMA-1のフライトジャケットがリバイバルしている。本来のナイロン素材に加え、コットンやスエット素材を使ったもの、ナイロンに転写プリントを施したもの、身頃と袖を別の素材で仕立てたものなどもみられる。
2014年1月22日原宿 10℃ - (6)
コクーンシルエットのウールコートにハイウエストのペンシルパンツ(左)、MA-1風のブルゾンに杢スエットのペンシルスカート(右)など、ボリュームのあるトップスにタイトなボトムのコーディネートが注目されている。
2014年2月16日原宿 10℃ - (7)
キャリア層に支持の高いノーカラーのウールコート。今シーズンはウエスト部分で切り替えを施し、異なる素材を接ぎ合わせたデザインが好まれている。ウールの異素材コンビだけでなく、レザーやファーなどの皮革使いも目立つ。
2013年12月23日銀座 8℃ - (8)
ダウンジャケットに変わって、ダッフルコートなどのウール素材のトラッド調コートが10代のヤング層を中心に支持されている。スタッズやメタルボタンなど、ハードなディテールをポイントにしたものなどが多い。
2013年12月25日原宿 10℃ - (9)
衿にレザーを使ったウールコート(左)や、大きな衿がポイントのPコートなど、スクエアなシルエットでマニッシュな感覚のウールコートが好まれている。色ではベージュのほか、アイボリー、グレー等の支持が高い。
2014年1月26日渋谷 15℃ - (10)
長年愛用したウールコートのような、ボコボコとした凹凸感をあえて施したような、毛羽立ったような風合いのコート(左右)。ボリュームのあるコートに合わせて、ボトムはストレッチデニムやペンシルパンツを合わせている。
2013年12月23日渋谷 8℃ - (11)
ボアやブークレーなど、表面のもこもことした素材感に加え、中綿を入れてシルエットもふんわりとさせたアウターが20代前後の女性に広まっている。綿×ポリエステルのボアを用いるなど、軽くてあたたかなアウターが好まれている。
2013年12月23日渋谷 8℃ - (12)
ボトムでは、ストレッチ入りのデニムが多数登場している。特にホワイトデニムの人気が高く、10代のヤングから、30代のキャリア層まで幅広く支持を集めている。
*写真及び解説:共立女子短期大学 生活科学科 カラー&デザイン研究室
品質管理上の留意点
'13年/'14年秋冬(9月~2月)のストリート・ファッションの動向から見た品質管理面からの留意(アドバイス)事項
1)細身のシルエットのスカートは、布帛では滑脱に気を付けたい。また、洗濯処理後、表地と裏地との収縮差により、裏地ののぞき等、外観変化に注意が必要である。(特にニット地には要注意)
2)キルティングの生地を使用する場合、注意することは表示である。組成表示は「表側」・「裏側」と表記することが望ましい。「表地」・「裏地」は意味が違うので使い分けることが大切。取扱い表示に関しては凹凸感・モコモコとした素材を生かせるよう、アイロンがけは避けるのが望ましい。
3)ブルゾンなどに施された転写プリントは、加工の方法により剥離の可能性が高いので、事前に洗濯やドライクリーニングなど、確認をする配慮が必要である。
4)異素材との組み合わせは今後も続く傾向にあるが、商品としての安定性を考えたならば、特徴の近い素材の組み合わせが望ましい。各々の生地の洗濯やドライクリーニングでの収縮差、硬化・剥離などの風合いや外観変化など、事前の確認が重要である。加えて、組成表示や取扱い表示など、より細やかな気配りが大切である。
5)スタッズやメタルボタンなど素材にアレンジする場合、特に注意する点は、皮膚を傷つけない配慮である。突起があるものは衿部に使用しないなど、企画段階での配慮が必要である。