公益財団法人日本繊維検査協会

テキスタイルトレンドと品質対応

2013/14年秋冬テキスタイルトレンドと品質管理のアドバイス(プルミェールヴィジョン展の傾向をベースに)

・・プルミエールヴィジョンなどヨーロッパ素材展の傾向を中心に・・

2013/14年秋冬のコア・ファッション・コンセプト<ヨーロッパの中世>

<目次>
1)はじめに:2013-14 AWのコア・ファッション コンセプト<ヨーロッパの中世>の説明
2)2013/14年秋冬のテキスタイル傾向 概要
3)2013/14秋冬シーズンの6つのビッグトレンド
4)それぞれの特性を、そのイメージ写真などで解説 
5)後記1  プルミエールヴィジョン・アワード
6)後記2  傾向とまとめ

 *品質管理面からのアドバイス

1.はじめに:2013-14 年秋冬の コア・ファッション・コンセプト <ヨーロッパの中世>

当時ヨーロッパ中世ルネサンス期は世界的な寒冷期が到来し穀物不作のため、人々の体力は衰弱、連鎖的に黒死病(ペスト)を媒介するネズミが激増、ペストの拡大(国全体の3分の一の人々が命を失った)。明日への生きる希望も断たれた人々は明日への夢をも持てない状況へと陥った。この現象はあらゆる分野に影響をもたらした、と言われています。

特に、アートの世界では「神」「天使」「天国」といった「目」に見えないもの、見たこともないものを志向、思想的に「明日」より「今日」を生きる、という発想が芽生えました(ルネサンスの誕生)。

 

2.2013-14年秋冬テキスタイル傾向 概要

中世ヨーロッパの経済状況、貧富の格差、社会の不安要素が増大したことなどは、現在の社会情勢と共通していると指摘され、今シーズンのテキスタイルトレンドに影響を与えています。

(1)中世様式の装飾性の高い素材の傾向が顕著に

(2)ステルス性(視覚より触覚)を重視した後加工による新しい感触の素材

3.2013/SSシーズンの6つのビッグトレンド

2013-14年秋冬のテキスタイル傾向は以下の6つに括れます。
1. To elegance=カジュアルからエレガンス志向
2. Middle ages=ヨーロッパ中世様式からの発想
3. Decorative=装飾性
4. Chemical wool=ケミカルウール(ウールの合繊化、合繊のウーリー化)
5. Double face=ボンディング、二重織り、接結糸によるダブルフェイス、リバーシブル
6. Knit & jersey=ニットは太番、ジャージーはミラノリブ、ポンチローマなどのライン

4.それぞれの特性、そのイメージ写真で解説

[To elegance=カジュアルからエレガンス志向]

  • ・ダメージ加工を与えた、ユーズド感などシャビー感覚から 「ドレス」「スカート」「ブラウス」「ウールコート」アイテムを上質素材で構築
  • ・エレガンス傾向になれば素材設計、構成、作りが上質素材へシフトすると思われる

[Middle ages=ヨーロッパ中世様式からの発想]

  • ・このテーマはジャカード、ドビー、マトラッセ(フクレ織り)など立体的な織り組織が考えられる

[Decorative=装飾性]

  • ・ここでの装飾性は、(2)「Middle ages」での織物とは異なり、例えば、レース、刺繍、スパンコール等、透け感と言うより空き感のある素材

[Chemical wool=ケミカルウール(ウールの合繊化、合繊のウーリー化)]

  • ・スーツの方向性も変えるほどのウールの合繊化は特殊な後加工の素材

[Double face=ボンディング、二重織り、接結糸によるダブルフェイス、リバーシブル]

 

[Knit & jersey=ニット&ジャージー]

  • ・ニット(セーター編み)は太番、ジャージー(カットソー)はミラノリブ、ポンチローマなどラインのでるもの
  • ・ニットはすでに市場に落ちてきて、特に太番糸のニットコートなどはブレイクしそう

 

後記1 2013/14AWプルミエール・ヴィジョン素材展の受賞作品)

プルミエール・ヴィジョン・アワードの結果・・・プルミエール・ヴィジョン・アワードは年1回開催され今回で4回目受賞社は以下の通り。

・イマジネーション賞(素材、テクニック、意匠、加工など卓越した表現力に対する賞)

 NIKKE :ニッケ(日本) *ウール100%でありながら樹脂加工による後加工でプリンプリンとした「合繊タッチ」を表現した「ケミカル・ウール」

 ・審査委員大賞(グランプリ:最も優れたテキスタイル)Ricciani Tessile:リチアー(伊)*シルク63%ナイロン37%の素材に片面をペーズレー柄のエンボス加工を施した素材、と反面を無地素材の貼り合わせにより装飾性があり、ハリとしなやかさもある新質感の「ボンディング素材」

 ・ハンドル賞(風合い、タッチや素材の動きの新鮮さに対する評価)Jacky tex :ジャッキーテックス(伊)

*シルク73%ナイロン27% これも高反発性がるが、ソフトと相反するタッチの意外性が高く評価された「ダブルニット」

 

*シルク73%ナイロン27% これも高反発性がるが、ソフトと相反するタッチの意外性が高く評価された「ダブルニット」

・イノベーション賞(革新的なクリエーションを感じさせる表現Ricciani Tessile:リチアーニ(伊)

*ウール100%の超強撚糸使いのストレッチ素材、織物とは思えない伸縮性が特徴

*日本の受賞は今回で4回連続の受賞となり、made in japanのレベルの高さを世界に発信された

 後記2-傾向とまとめ(素材が変わればフォルムも変わる)

ここ数シーズン続いた装飾性素材がファッションのらせん階段を2~3回(シーズン)回って次のステップが見えてきました。

新素材への探求心は冒険心といわれるように、常に新地開拓者(メーカー)の弛まぬ努力の結果を見るようで、素材展示会を観る際はいつも一種のワクワク感があります。

今回のそれは2通りあり、1つはPVアワードで受賞した日本の「ニッケ」が開発した、ウール100%でありながら樹脂加工による後加工でプリンプリンとした「合繊タッチ」を表現した「ケミカル・ウール」です。

もう1つは合繊メーカーの「旭化成」「小松精錬」「東レ」においても同じ風合いタッチの合繊を開発している素材で、ウール素材同様、合繊素材を特殊な織り組織、後加工により結果としてプリンとした風合いを出しています。

と言うことは原料の種類に拘わらず来シーズンのトレンドは「合繊のウール化」「ウールの合繊化」のプリンタッチ現象でしょうか、素材の変化はスーツ(=ジャケット&ボトムス)のファッショントレンドまで、方向性づける 大きなファクターとなりそうな予感を感じました。

以上、「テキスタイルの傾向予測情報」は、2013/14AWプルミエール・ヴィジョン展及びウニカ展の取材に基づき、予測情報としてまとめたものです。

解説:MKプランニング代表 テキスタイルプランナー 小山正夫

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*品質管理面からのアドバイス

以上の2013/14年秋冬テキスタイル素材傾向(予測)をうけて、当JFTの試験検査を担当する現場サイドからの品質管理上の留意点をまとめました。

 

1.「カジュアルからエレガンス志向へ」について

ここで、まず浮かぶのは「ドレス」「スカート」「ブラウス」「ウールコート」等の分野での上質生地素材の台頭です.

1)シルク、カシミヤ、アンゴラ、アルパカ、などの高級素材の生地を使用した製品の表示に際してまず注意しなければならないのは「組成表示」です。

「ウール」「毛」又は「羊毛」「らくだ」[アルパカ]は指定用語ですからそれぞれの名称で組成表示を行うことが出来ます。しかし「ビキューナ」は指定用語に含まれていないので、[ビキューナ100%]は不適です。

このように表記するのが正解です。

2)これらの高級羊毛の生地素材を用いた製品について、いまひとつ注意しなければならないのは「取扱い絵表示」です。

・「ドライ」 石油系   ダンブル ☓   自然乾燥○

・アイロン「中温」などのことを頭に入れて細かい点に配慮ことが必要です。

 

2. レース、刺繍、スパンコールなど透け感のある素材について

1)洗濯機使用の場合には中性洗剤に、絵表示の「ネット使用」の付記表示を。

2)スパンコール物のドライ表示には、石油系 ○、(パークロ系 ☓ )であることを頭において対処しなければなりません。

 

3. ケミカル・ウール(ウール生地に合繊調加工を施した来季人気の素材)について

ここでは下記事項に注意して対応する必要があります。

洗濯方法

a.ドライ/(石油系 ○) (パークロ系 ☓) (タンブル ☓)

b.手洗い 中性洗剤 平干し

 

4. リバーシブル製品の表示について

裏側の素材が表側の素材と同じ場合

例・・・[ 綿100% ]でも間違いではない。しかし、

の方がわかりやすい。

よく[表地、裏地]と表記されているのを見かけるがこれは誤りで、[表側、裏側]が正しい。

 

5. ボンデング素材の絵表示は

素材がドライに適するかどうかを確認した上で表示を決めるようにして下さい。

 

 6. ニット太番手使い(概ね5G前後)の製品は

洗濯絵表示   手洗い  平干し   ドライ  タンブル禁止

 

以上、日本繊維検査協会/品質管理担当者より

 

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