テキスタイルトレンドと品質対応
2015年春夏テキスタイルファッション・トレンドと品質管理のアドバイス
・・プルミエールヴィジョン(パリ)とウニカ(ミラノ)の両素材展の傾向を参考に・・
2015年春夏ファッション・コンセプト**キーワードは<クラフト感:手工芸的技法><タッチ:素材の触感>
<目次>
1)2015SSのファッション・コンセプト
2)2015SSカラー・チャート
3)2015SS素材コンセプトの方向性
4)2015SSファブリック・ポイント
5)FABRICATION('15SS売れ筋予想素材)
6)後記/ 傾向とまとめ
*品質管理面からのアドバイス
1.2015年春夏のコンセプト
キーワードは「クラフト感:手工芸的技法」「タッチ:素材の触覚」
ITの進化に伴い、理数的な社会システムがある側面、飽和的慢性的な行き詰まりを感じたとき、「文化的、伝統的、手工芸的な技法は高品質や高級感」が対側面として希求されるマーケットに受け入れやすいキーワードとして挙げられる。 2月に開催されたミラノウニカのシンボルマークにも「ハンドマーク」を忍び込ませている。
また、同時期開催されたプルミエール・ヴィジョンでは、トンボをコンセプトシンボルに掲げている、トンボは、勝利や幸せのシンボルとともに、古来馴染み深い昆虫で、レンズを沢山もった複眼や薄くて繊細だが驚異的な機能と質感を持つ「トンボ」を「素材の触覚」をキーワードとして今シーズンの具体的なシンボルイメージとしている。
2.2015年春夏のカラーチャート (2015SSプルミエールヴィジョンより)
■今シーズンの使い方は、カラーだけでなく素材とのハーモニーも同時に考えながら使っていくことが大事。(図3)
*カラー・トーン(図4)
・左:濃密な色調と控えめな色調が描き出す密やかなコントラストの「ディープ&クリアカラー」
・中:ピチピチとして挑発的な甘いカラー。紗で覆ったような、もしくは灰色を帯びた、「ソフト&フレッシュカラー」
・右:厳格でありながら光に満ちたダークカラーにパール光沢の「ペールカラー」
3. 2015 春夏ファブリック・コンセプトの方向性
今シーズンの素材を考えるうえで、まず一番大事なことは、「タッチ:素材の触感」であり、「上質感や高級感」とも相関関係にある新しい「ナチュラル感」「クラフト(手工芸的)技法」による未来的なタッチが求められています。それには、「素材ミックスやボンディングやコーティングなど、ハイブリッドな新しい技術」の付加価値。ジャカードやピケ等の「凹凸効果の継続」また素材は、「エアリー感や半透明感を含めて軽さ」などがポイントとなります。
4. 2015春夏ファブリック・ポイント
1.今シーズン最も強調されるのは「タッチ」
・ジャカード等3D効果のある触感や、後加工のラバーコーティングや滑らかさやハリ感を与えるコーティングがでてきています。また織り柄やボンディングなどによるボリュームあるタッチも継続です。
・強調される手触り/光沢感があり滑らかそうに見えるが、織地柄による凹凸感あるタッチ
2.エアリー素材
・エアリーな素材や軽い素材にバリエーションがでてきています。織りや編地によるガーゼ、極薄ポプリン、レース、ネットやメッシュなど、またアイレット刺繍やオープンワーク、パンチングやレーザーカットなどの加工によるホール効果のある素材。ボイルやクレポン、トレーシングペーパー風のシルクなどの半透明素材などが注目されています。
3.凹凸感(ピケ、ハニカムなど)
・ドライタッチのある凹凸効果では、鹿の子のポロシャツのような布帛で規則的な凹凸のピケやハニカムが浮上しています。コットンやサマーウール、シルク、合繊などマテリアルコンビネーションがされていて、さらに軽くてストレッチ性がある新しいピケやハニカムである。
4.フレキシブルな柔らかさ
・仕立て映えの良さ、自由な体の動きに添う素材、体を包み込むような素材が求められているなかで、ストレッチは今シーズンも継続して重要である。また厚みがあってもしなやかで軽い素材や、ボリュームがあってもソフトな素材が注目されている。
5.光沢のバリエーション
・高質感のあるシルクやレースには、デリケートな虹色光沢やメタル光沢。カジュアルには、パールや、ゴールド、シルバーのコーティングに洗い加工をかけて抑えたデニム光沢にし、その他の素材では、ニュアンスに富む光沢やシルケット加工やカレンダー加工が施されている。全体的にみても今シーズンは軽い光沢傾向である。また光沢とマットを組み合わせても使われます。
6.組み合わせ効果
・今シーズンも継続されるダブルフェイスは素材の組み合わせにアイディアが求められる、2014年秋冬シーズンにPVアワードでグランプリを取った小松精練のボンディング素材のような、無地と柄の組み合わせにスポンジを挟んだり、ニットとメッシュの組み合わせやボイルと大柄の接結など様々な組み合わせバリエーションで2つのアイデンティティを持つ素材が特にスポーツ関連素材として増えています。
7. パターン・バリエーション
a.トレンドカラーのパッショネートなイエローに対してクールなブルーを基調カラーとした海のモチーフが動物柄にかわり新しくでてきている。水や海、魚、鱗、貝殻、珊瑚などの柄である。
b.トンボ等の昆虫柄も多く花柄などとも組み合わされている。エキゾチックな植物柄として、素朴なジャングル風景やハイビスカスや、オーキッド、ハワイの花などトロピカル花、またガーデン風や手描き風等花柄はバリエーションが豊富である。
c.エキゾチックな植物柄として、素朴なジャングル風景やハイビスカスや、オーキッド、ハワイの花などトロピカル花、またガーデン風や手描き風等花柄はバリエーションが豊富である。手描き風やペンで描いたような柄、バイカラーのドットやオプティカル柄、幾何柄等シンプルでグラフィカルな柄などバリエーションが豊富である。
d.素朴なジャングル風景やハイビスカスや、オーキッド、ハワイの花などトロピカル花、またガーデン風や手描き風等花柄はバリエーションが豊富である。手描き風やペンで描いたような柄、バイカラーのドットやオプティカル柄、幾何柄等シンプルでグラフィカルな柄などバリエーションが豊富である。
e.手描き風やペンで描いたような柄、バイカラーのドットやオプティカル柄、幾何柄等シンプルでグラフィカルな柄などバリエーションが豊富である
5.FABRICATION (2015春夏売れ筋予想素材)
「ファッションは螺旋階段(*)」の要領で15ssの売れ筋素材の予想を一覧化した表。
(*ファッションの螺旋階段については、2013ss解説時の「ファッションの捉え方について」の項を参照ください)
1.ナチュラル感(綿・麻ライク)
・ ここ数シーズンの素材サイクルスパンはシルキー(合繊ライク)→ミックス(複合/二面性)→ナチュラル(綿麻ライク)をスパイラルの様に回転しているように見えます。
・ 15ssは天然/化合繊共に「ナチュラル感」が必須です。
2.表面変化(ジャカード、ドビー)
・ジャカード、ドビー、ピケ、ハニカムなど立体感や表情に繊細な変化を出すテクニックとして注目され、織り組織はじめ、編み、後加工まで手法も幅広くなっている。
3.装飾性素材(穴あき・レース)
・軽く、装飾性のある素材としてヒートカット加工、資材系素材をソフト加工した素材にパンチングなどを施した穴あき素材、レイヤードスタイル、カジュアルにも使える透明感のあるレースなどエアリー感を伴いながら装飾性素材として注目される。
4.軽量/透明素材
・レイヤードスタイルや軽さの人気向上と共に軽さ、透明感、半透明感、が重要性が増してきた。生地をレイヤードすることで透かして見える半透明感も重要なファクターになります。
5.ハリ感 素 材
・立体的で造形的なシルエットを構築するための素材はこの数シーズン人気であるが、よりパリパリ感のある素材感にシフトしています。
6.光沢感 素 材
・織り組織のサテンや後加工によるフラットな光沢感より糸自体の光沢糸による効果で凹凸感、膨らみのある素材、ジャージー、トリコットにも光沢感は求められています。
7.サマー ツイード素材
・ファンシーヤーン、リング糸、を使ったサマーツイード、フクレジャカードなども人気。
8.ジャージー素材/(織りもジャージー化)
・シロ/クロ千鳥、グレンチェックなどクラシック先染め柄をニットで編んだものなど、従来織り組織のものをニットで仕上げた素材が新鮮。
9.プリント柄/花(トロピカル)
・イエロー、オレンジ、ブルーなど明るいブライトカラーのカラートレンド傾向のなかでプリントもトロピカル花柄など熱帯感覚のプリントに注目。
10.プリント柄/動物(陸・海)
・夏〜盛夏にウエアもワンピース、ドレスに変化するなかで陸上のアニマル。海中の熱帯魚、海草、貝、海底の景色などの柄。
11.ストライプ・ボーダー柄
・マリン傾向のなかでシンプルなストライプ、ボーダーの継続。
後記-傾向とまとめ
『秋の質感。春素材』 ・15年春夏のテキスタイルトレンドには変化が感じられます。 それは、近年は「ハイテク、ハイブリッド、など理系」の言葉が多用されてきましたが、このシーズンは、「クラフト、ハンド、など工芸的」な言葉が気になります。
・「クールで未来的な感覚」から「温かみを感じる手作り感」へ素材表現がシフトしています。 素材が「ナチュラル感」「凹凸感」「膨らみ」「半透明感」などがキーワードになっているのもその証左といえるかも知れません。
・この傾向は、秋冬企画ならば即納得ですが、春夏企画で出現したことに発想の転換力が求められていると考えられます。
薄く軽いが膨らみ感がある素材。など「秋の質感。春素材。」がポイントになりそうです。
解説:MKプランニング代表 テキスタイルプランナー 小山正夫
・・・・・・・・・・・・・・
*品質管理面からのアドバイス
(1) カラーの傾向
´15年春夏カラーの傾向として、「ディープ&クリアカラー」「ソフト&フレッシュカラー」「ペールカラー」とカラートーンがあげられています。 一般的に、淡い色は光に弱く、濃い色は湿潤摩擦など湿潤に弱い傾向にあります。 また、素材により堅牢性も変わります。あらかじめ、染色堅牢度を確認しておくと良いでしょう。
(2) 素材について
´15年春夏ファブリックでは、6つのポイントでまとめられています。これに関連して次の二つの留意点を挙げておきましょう。
エアリーな素材であるガーゼや極薄な織地は縫い目からの滑脱に注意が必要です。 一般的に、密度が粗目の織地は滑脱しやすいので、あらかじめ、縫い目滑脱抵抗力試験で確認を行うほか、滑脱防止のための縫い方を工夫したり、ゆとりのあるデザインにするなど配慮が必要です。
組み合わせ効果としてあげられているダブルフェイスのボンディング素材は、異素材の組み合わせでは収縮差により形態変化を起こす場合も考えられます。接着の加工によっては洗濯やドライクリーニングで剥離することがあります。事前の確認が必要です。 また、合わせて組成表示や取扱い表示など、先を見据えた企画をすると良いでしょう。
(3) パターンバリエーション
パターンバリエーションとして、植物柄や花柄など、バリエーション豊かに登場しています。
プリントの注意点として、濃色から白や淡色への色移りがあげられます。 洗濯液やドライクリーニング溶剤での色泣き、ポリエステル繊維に見られる分散染料の昇華などです。
色泣きとは、染色や捺染された部分から湿潤状態で染料が白場や淡色部へ移行し汚染する状態です。 昇華とは、物体が固体から気体に変化する現象のことで、液体の状態を経ずに生地の染料が移行する状態です。
(4) 素材のトレンド
´15年春夏のトレンドの一つとして挙げられている「軽さ」「半透明」 の素材では、組成表示に注意が必要です。
オーガンジーのような透明感のある薄い生地の裏へもう一枚生地を付け、裏の生地の模様などが透けて見えるように製品をつくる場合、その両方の生地が表生地と解されます。この場合、オーガンジーを「表側」、模様の付いた生地を「裏側」と称して表示します。
また、「ハリ感」で注意するのは、強度です。パリパリになると引裂強度が落ちますので、あらかじめ強度の確認をしておくと良いでしょう。